文化財アーカイブ
クロスマインズでは、
横須賀市指定重要文化財である建長寺派 満昌寺 襖絵 雲龍図(幕末~明治初期の絵師 狩野派 斎藤海信作)のデジタル保存をご依頼頂きました。
プロ用のデジタルスキャナーでの巻物の1,200dpiデジタル化は、既に経験が有りましたが、
本格的な襖絵のデジタル化(アーカイブ)は、初の試みでした。
1年に一度だけ、そして、1日だけの公開(前後数日間は、ご準備の為に非公開にて、倉庫より御堂に襖を設置されます。)ですから、
原本である襖は、出来るだけその期間でアーカイブ出来る方式、が好ましいと考えました。
・美術品用のデジタルスキャナーを用いるか、それとも、デジタルカメラを用いるか?
・デジタルカメラを用いるとしても、どの程度の分割撮影数が必要か? また、照明・撮影方法は?
・原本との色再現性はどの様に確保するか?
最終的には、4基(16ランプ)の照明を用いて、デジタルカメラを、真ん中に置き、煽る方法にて分割撮影を手動にて行う方法としました。
襖絵は、4枚で一つの絵になっていますので、同じ照明で4枚の撮影を行います。
画像合成の為に、拡大率の異なる数段階の撮影をしますが、
最終段では、襖一枚ずつ110枚程度の撮影を行い、襖絵一つ(4枚の襖絵)で、440枚程度の画像を処理ソフトにて合成します。
出来上がったアーカイブの解像度は、文化財としては最高峰の1,000dpi相当になっており、和紙の状態も含めて、襖絵の忠実な再現が出来ています。
撮影時間は、当初は4枚の襖絵一つで2日間掛かっていましたが、
現在は、業界屈指のデジタルカメラ EOS 1Dx MkIIを用いる事で、数時間程度で撮影を完了する事が出来ます。
加えて、画像合成に関しても、純正レンズの性能と相まって、周辺光量もかなりの精度で補正されています。
ソフトウェアの日々の進歩に伴い、合成も短時間化されつつ有ります。(とは、言っても、440枚程度の合成です)
色再現性に関しては、
印刷物(弊社では、ラージェロップ技術を用いた和紙への印刷方式を用いて、襖絵を屏風化しています)と原本襖絵の
色再現をマッチングさせる為に、モニター上とのマッチングを行います。
満昌寺様からは、襖絵の屏風化のご用命を頂いていましたので、
色再現に関しては、更に、現物と和紙上へのラージェロップ印刷の色確認と
数回の色微修正を行いながら、原本に出来る限り、原本に忠実になる様に調整をしていきました。
原本に、測色計を直接当てる事が出来ませんので、最終的な微調整は、数段階の実印刷物と原本との目視による比較としました。
尚、通常の印刷紙とラージェロップ印刷の差異に関しては、殆どの色差は無い事を、確認しており、和紙のベース色(きなり)による
差によるものと考えています。
色測定に関しては、積分球タイプの測色計d/8と45/0タイプの反射測色計が有りますが、和紙上へのラージェロップ印刷の測色に関しては、
積分球タイプによる測定が、好ましいとも考えられます。
今後、こうした研究も同時並行しながら、アーカイブ及び印刷との色マッチングを進歩させて行きたいと思っています。
また、文化財などのアーカイブ技術、商品に関しては、長年お世話になったキヤノン株式会社、そして、スキャニング会社様、印刷会社様にて、
弊社よりも先駆けて行われていますので、今後、様々な形で、ご教示とコラボレーションをさせて頂ければ、幸いです。
□サンプル画像